職業アレルギーの場合、アレルギーの発症率はいちじるしく高い。
すでに述べたように、このことは正常人とアトピー患者のIGE抗体産性の程度の違いは相対的なもので、微量のアレルゲンに対しIGE抗体を作りやすい素因がアトピー素因といえよう。
ヒトの白血球には赤血球よりもさらに複雑なタイプがある。
それは白血球表面のタンパクが個人個人で微妙な違いを持ち、その抗原性が異なっているからである。
これらの抗原は白血球だけでなく臓器細胞にもあるので、臓器移植の際に重要で、型の違う臓器を移植するとそれに対し抗体が生じ拒絶反応が起きる。
そこでHLAは組織適合性抗原ともいわれる。
異種タンパクが体内に入ると、マクロファージと呼ばれる細胞に取り込まれて分解され、大きなタンパク分子が小さい分子のペプチドになる。
マクロファージはこのペプチドとある種の組織適合性抗原とを一緒にT細胞に示すと、これに反応しうるT細胞が活性化され種々の免疫現象を起こす。
したがってHLAは、免疫反応に重要な役割を果たしている。
特定の疾患と特定のHLA型は密接な関係にあることが知られている。
寄生虫感染とアトピー性疾患で、IGE抗体の存在、血液中好酸球数の上昇など、検査所見は類似点が多い。
好酸球には寄生虫に対し傷害作用があり、腸管アレルギーによる腸管唾箪は腸管内虫体を排出するのに役立っているという。
哨乳類は調べたかぎりIGEを持っているので、IGEは寄生虫からその動物種を保有するため発達したもので、たまたまアレルゲンが寄生虫抗原と似通った性質を待っているため、同様の生体反応を生じさせるという説がイギリスのケイから提唱されている。
後述するように、寄生虫感染はほかのアレルギー発症を抑制するとの報告もある。
日本のスギ花粉症で、K大学のS・T教授らはスギに対するIGE抗体産生に際し、抗原特異的抑制遺伝子の存在することを推定した。
この抑制遺伝子は優性で、両親から、あるいは片方から受けついでいればスギ花粉症を発症しないが、抑制遺伝子を欠如する染色体を二つ、それぞれ両親から受けついだ場合、抗原特異的サプレッサーT細胞の機能が低下してスギに対するいちじるしい応答性が示されるとした。
この遺伝子はHLAlDQ領域というところに存在し、スギ花粉症とHLAlDQW3との相関が認められた。
さて、ヒトでは一三対の常染色体と、女性ではXXの一対の性染色体、男性ではXYの性染色体を持っている。
常染色体はその長さ順に第一〜一三の染色体番号がついている。
最近、イギリスのC氏らはアトピーを発現させる遺伝子が第二染色体に存在し、この遺伝子がアトピーの母から子に伝えられると、子はアトピーになる率は高く、アトピーの父から子にこの遺伝子が伝えられても、子はアトピーになる率は低いと報告している。
その違いの生ずる理由は不明である。
さらに同じグループはこの遺伝子がマスト細胞のIGE受容体の構造に関係するといっている。
しかしこのC氏らの報告を否定する報告もあり、確かなことはわからない。
一方、アレルギーに関与するILl4、IL‐5、GMlCSFなどのサイトカインが第五染色体の遺伝子によって作られるので、第五染色体の遺伝子構造が正常人と異なるのではないかという研究がアメリカのM氏らによって行われており、期待が寄せられている。
正常人の血清1皿中には五〜二五○国際単位のIGEが存在する。
一国際単位は二・四である。
一は一gの一○○万分の一である。
このIGEはなんらかのアレルゲンに対するIGE抗体であるが、特定のアレルゲンに対するIGE抗体が全部を占めるわけではない。
たとえばダニに対するIGE抗体が総IGEの五○%程度を占めることがあるが、それ以下のことが多い。
一般になんらかのアレルゲンに対するIGE抗体は高いと、総IGEも高くなる。
特にアトピー性皮層炎では総IGEが高く、正常人の一○○倍程度になる場合がある。
しかし瑞息やアトピー性皮層炎を合併しない場合のスギ花粉症では、スギに対するIGE抗体は高いが、総IGEは正常人と変わらないことが多い。
総IGEはアトピー性疾患、寄生虫感染等で高い。
また一卵性双生児の方が二卵性双生児よりも総IGE値の一致率は高い値を示す。
アトピー性疾患の総IGEの遺伝については多くの報告があるが、結論は得られていない。
少なくとも単純な遺伝形式では説明できないというのが一般的見解である。
気道過敏性は瑞息の発症に必須の要因であるが、気道過敏性が先天的なのか後天的なのか決定しがたい。
瑞息患者では、正常人に比べごく少量のアセチルコリンやヒスタミンなどの吸入で気管支が収縮する。
すなわち気道過敏性があり、疾患発症の主要な因子の一つとされている。
気道過敏性は、瑞息発症の有無にかかわらず各世代に伝わることから、常染色体優性遺伝子で説明できるとする報告もある。
しかし、この気道過敏性と皮内反応などで見たアトピー素因との間に関連があるのか、ないのかという点については議論が分かれる。
イギリスのS氏は、アセチルコリンやヒスタミン吸入で調べた気道過敏性充進が家族的に見られるとして、気道過敏性の先天性を示唆している。
メサコリン吸入試験の相関は一卵性は二卵性双生児より高い。
このように気道過敏性が先天的であることを示唆する報告が多いが、その遺伝性については今のところ明確ではない。
また、気道過敏性は固定的でなぐ、アレルゲン吸入誘発後、数日間、気道反応性が充進し、またなんらかの治療により長期寛解を得たあとは低下するとの報告が多い。
そのほか、大気汚染物質への曝露、ウイルス感染などが気道過敏性を充進させるという、実験的・臨床的データの報告があり、気道過敏性の先天性、後天性のいずれも関与する可能性がある。
そこで、どのようなきっかけで症状が起きるかについて、患者の訴えから症状の発現とそれら因子との関係について疫学的に調査を行い、さらに疑わしい物質について誘発テストを行ったり、動物実験によって確かめたりする。
また、これらにより作用機構をも研究する。
最近、アレルギー疾患がいちじるしく増加しているので、その増加と平行して増加している物質あるいは因子との関連を明らかにする。
などの努力がなされている。
以下にそれを示そう。
染物質などアトピー疾患患者の示すアレルギー症状をIGE抗体の作用だけで説明することはできないが、アトピー性疾患ではIGE抗体の保有が特徴である。
IGE産生に関与する環境因子に関して以下のような報告がある。
イギリスでの研究によると、三歳までにT細胞の感作の高い子供がアレルギーになりやすい。
最初、アトピー性皮層炎、ついで瑞息が現れる。
また室内塵ダニを妊娠中、および乳児が生まれてから満一歳まで除去すると、除去しなかった場合に比べ五歳までの皮膚炎も瑞息も有意に減少する。
この研究では皮層テスト陽性率が七五%減少した。
したがって母親の抗原曝露も、また乳児の抗原曝露も、両方ともIGE抗体産生において非常に重要である。
母親がプロゲステロン(女性ホルモン)の製剤を服用すると、特異的減感作療法は特異的IGE抗体を減少させる。
喫煙は血清総IGEを上昇させる。
生まれた月と後年におけるアレルギー発症と関係がある。
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